研究概要 |
本年度は,前年度開発した反応の一般性を確立するために様々なジエン-鉄錯体を用いて、アリルシランによる置換反応について検討をおこなった。 1.アリルシランによる求核置換反応 鎖状のジエン-鉄錯体にアリルトリメチルシランを加えルイス酸存在化反応を行ったところ,無置換の基質、ジエンの1,3,4位がアルキル基で置換された基質、4位が嵩高い置換基を有する基質を用いても反応は進行し、目的とするアリル化されたジエン-鉄錯体化合物を良好な収率で得ることに成功した。 2.環状-ジエン鉄錯体へのアリルシラン試薬の適用 また、環状ジエン-鉄錯体では鎖状ジエン-鉄錯体とは鉄配位子によるカチオン安定効果が異なるため、鎖状ジエン-鉄錯体と同様にアリルシランによる置換反応が進行するか検討を行った。 まず化合物ジエンの2位に脱離基として,メタンスルホニルオキシ基を有するジエン-トリカルボニル鉄錯体を用いて同様のアリル化反応の検討を行ったが,目的化合物を得ることができなかった。この結果よりジエンへのルイス酸の付加が進行しにくかったことが考えられた。そこで鉄上のカルボニル配位子をより電子供与性の大きいリン配位子に変換すればジエン上をより電子豊富にすることができルイス酸が付加しやすくなると考え、カルボニル配位子の一つをリン配位子に交換したジエン-鉄錯体を用いて検討を行った。その結果、予想したとおりに目的とするアリル化生成物の収率の向上に成功した。また、さらなる収率の向上を目指し脱離基をトリフルオロメタンスルホニルオキシ基に変えたジエン-鉄錯体を用いて反応を行ったところ高収率で目的化合物を得ることに成功した。
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