フラーレンをはじめとする縮合多環芳香族化合物の炭素骨格の一部をヘテロ原子で置換したヘテロπ共役系分子は、母体炭化水素にはない特性を示すことから、光電子デバイス・有機磁性体・有機導電体などへの応用が期待され、その合成と物性評価は、基礎有機化学研究の大きな目標の一つとなっている。本研究では、次世代表示材料として近年研究開発が活発化している有機EL発光素子やディスコチック液晶分子のコアに利用されているコロネン分子に注目し、その橋頭位炭素を四級窒素で置き換えた「新規なカチオン型ヘテロコロネン(アゾニアコロネン)の合成と基本的な物性の評価を目的としている。 本年度(平成18年度)は、以下の成果を得た。 1.類縁体の合成 前年度合成に成功した外側橋頭位を四級窒素で置換したアゾニアコロネンの合成手法を展開して、ベンゼン環が縮合したアゾニアベンゾコロネンや8字型のアゾニアダブルコロネンの合成に成功した。一方、2つの四級窒素を外側橋頭位に導入したジアゾニアコロネンの合成については、生成したジアゾニアコロネンの多くが、溶媒中の微量水分との光反応によりピリドン型のコロネンに変化することがわかった。副生成物との分離後の収率は5%程度であり、今後合成条件や経路の改良が必要である。 2.基本物性の評価 合成に成功したアゾニアコロネン類について、ポリアニオン性マトリックス中における分光挙動(吸収及び発光スペクトル)を評価した。ポリスチレンスルホン酸アニオンとの複合体では、カチオン性の界面活性剤との混合比を変化させることで、希薄溶液から濃厚溶液に対応した発光挙動を示すフィルムを得ることができた。一方、カチオン交換性の無機層状化合物との複合体では、層間にインターカレートしたアゾニアコロネンが二次元的に同一方向に配向したJ会合体を形成することを見出した。
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