研究概要 |
芳香族臭素化物とリチウム2,2,6,6-テトラメチルピペリジドをTHF中で混合することによる,新しい化学発光系を見出した。化学発光は興味深い現象ではあるが,発光を伴う化学反応例はそれほど多くは無い。近年,化学発光が応用に供されるようになり,化学発光過程の基礎化学を理解することの重要性が増している。そこで、我々の見出した新規な発光系の発光機構を解明することを目的として,本研究を行った。この反応では、THFがLi試薬により分解しエノレートアニオンを生成し、それが芳香族ハロゲン化物から生じたベンザインに付加し、ベンゾシクロブテンを与え、さらに開環した後にベンザインと反応し最終的にアントラセンを生じることが知られている。発光種を特定するため、まずTHFの関与を調べた。ヘキサン溶媒中では発光しないが、エチルエーテル溶媒中では弱いが発光を示すことが分かった。これによりベンゾシクロブテン以降の中間体が発光には関与していないことがわかった。THF中での反応を、-50度で行うと発光は認められない。本申請で購入した光ファイバー式分光器を用いて、2反応液をフロー法で混合しつつ発光スペクトルを測定する系一式を組み立てた。反応初期には610nmに極大のある発光で、混合後1秒程度たった液にハロゲン化物を加えると640nmに発光極大があった。蛍光性物質であるルブレンを共存させてもこれへのエネルギー移動は認められなかった。今後、DFT理論計算によるエネルギー的な視点からの解析、生成物の蛍光スペクトル測定などを行い、機構解明を進めたい。
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