研究概要 |
本年度の「ヘリックス構造をもつフォトクロミックなジアリールエテンの創出」成果は、以下の通りである。 ジアリールエテンの合成 メトキシ基またはメトキシメトキシ基をもち,ベンゾチオフェンのヘキサフルオロシクロペンテンの接続位置が共に3位,共に2位及び2位と3位のジアリールエテン6種(1〜6)を合成した。 ジアリールエテンの光化学的性質 メトキシメトキシ基をもつジアリールエテン(1〜3)は分子の骨格に関係なくどれも高いジアステレオ選択性(1;93,2;92,3;95%de)選択性を示した.これは分子内の2つのメトキシメトキシ基の間で大きな静電反発及び立体反発が効果的に働いているためと考えられる,一方,メトキシ基をもつジアリールエテン(4〜6)はベンゾフェノンの接続位置によりジアステレオ選択性に差が観測された.これは,ジアステレオ選択性に2つのメトキシ基の間で働く静電反発及び立体反発に加えて,メトキシ基の酸素原子と対面するベンゾチオフェン上の硫黄原子の間で静電反発が働くために,酸素原子と硫黄原子の距離が離れているジアリールエテン(4)では静電反発が弱くなり,ジアステレオ選択性の低下につながったと考えられる(4;67,5;85,6;90%de).ジアリールエテン1及び4は,酢酸エチル中の光反応ではそれぞれジアステレオマー過剰率98%de,75%deで閉環体を生成した.酸素原子を含む極性の置換基が溶媒分子により,開環体の安定コンフォメーションが安定化されているためと考えられる.
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