パーフルオロシクロペンテンに2位で接続した二つの芳香環構造を持つ、高いジアステレオ選択性を示すジアリールエテン及びその類縁体である化合物3種を合成した。2位接続の複素芳香環はヘリセン構造を為す芳香環の数を容易に増やすことができる為、高いジアステレオ選択性をもち、大きい旋光度変化をもたらす可能性の高い化合物群である。また、3位で接続した芳香環構造を持つジアリールエテン類縁体3種を合成した。合成した6種ジアリールエテンの光反応を行い、ジアリールエテンの分子骨格や置換基の違いによるジアステレオ選択性を比較検討した。その結果、ヘリックス構造をもつフォトクロミックなジアリールエテンにおける構造と光反応挙動の相関関係について、以下に示す知見を得た。 不斉炭素上の置換基にメトキシメトキシ基を有するジアリールエテンは分子骨格に関係なく高いジアステレオ選択性を示した。分子内にある2つのメトキシメトキシ基間で静電反発及び立体反発が生じた為と考えられる。反応炭素部位の立体混雑を軽減させる為に不斉炭素上の置換基をメトキシ基としたジアリールエテンは、ジアステレオ選択性に差がみられた。分子内の2つのメトキシ基間で静電反発及び立体反発が働いている上に、メトキシ基の酸素原子とそのメトキシ基と向き合うベンゾチオフェン上の硫黄原子との間で静電反発が働いている為と考えられる。
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