研究概要 |
希土類とd遷移元素から成るシアノ架橋配位高分子、Ln[M(CN)_6]・nH_2O(M=Fe, Co)、は、高均質ペロブスカイト型酸化物(LnMO_3:Ln=希土類、M=Fe, Co)の前駆体として優れていることが知られている。本研究の目的は、このような複合金属酸化物の表面に貴金属を均一に被覆する手法を提案することである。そのために、申請者は、前駆体であるLn[M(CN)_6]・nH_2Oの結晶表面に露出している配位不飽和サイトに貴金属イオンを配位結合させれば、原子レベルで均一に単原子被覆できると考えた。次いで、これを熱処理すれば、貴金属を非常に均一に担持した複合酸化物LnMO_3が簡単に得られるはずである。このような戦略の基に、17年度は、La[Fe(CN)_6]・nH_2OおよびLa[Co(CN)_6]・nH_2Oをパラジウムの硝酸酸性水溶液に浸責することにより、結晶表面にパラジウムを担持することに成功した。18年度は、同様な方法で、ロジウムの硝酸酸性水溶液を用いてロジウムの担持を試みたが、担持することができなかった。これは、アクァ錯体を形成しているロジウム(III)が置換不活性であり、表面のCN基に配位できないためだと考えられる。そこで、ロジウムのシュウ酸水溶液を用いて実験を行った。これは、溶液中でロジウムがシュウ酸錯体を形成しており、シュウ酸架橋により表面のLaに配位できると考えられるからである。その結果、無色のLa[Co(CN)_6]・nH_2Oが淡黄色になった。この色調変化から、ロジウムが担持されたものと考えられる。どのように担持されているのか調べるために、FT-IRスペクトルの測定をしたが、シュウ酸基に帰属できる吸収帯を確認することができなかった。また、XRD測定を行ったが、La[Co(CN)_6]・nH_2Oの回折パターンと同じであった。しかしながら、600℃で熱処理したもののXRD測定をした結果、LaCoO_3のシグナルのほかに、La_2O_3によるシグナルが非常に弱く認められた。以上のことから、現段階では、ロジウムがどのように担持されているのか明らかではないが、シュウ酸溶液を用いることによって担持されることがわかった。
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