温度に応答してチャンネル構造を変化させる[Ni(dps)_2(NO_3)_2]G(dps=ジピリジルスルフィド、G=ゲスト分子)について、ゲスト分子を種々のアルコール、あるいはジオール、アセトンなどに変化させた際の動的挙動の変化について検討を行った。ゲスト分子をプロパノール(PrOH)やメトキシエタノール(MeOEtOH)などに変化させると、分子量の増加に由来すると考えられる、転移温度の低下が観測された。単結晶構造解析と示差操作熱量分析測定の結果、[Ni(dps)_2(NO_3)_2]Gは、硝酸イオンの回転に由来するチャンネル構造の変化を示し、転移温度以下(-5°C〜-20°C)ではチャンネルが狭くなることに由来したゲスト分子のメカニカルな捕捉が発現した。 また、新たに水素結合を介して高分子構造を有する金属錯体を合成し、化学刺激に応答して固体構造を変化させる動的金属錯体の合成に注目し研究を展開した。4-イミダゾール酢酸(ima)が2つキレート配位したニッケル錯体[Ni(ima)_2(MeOH)_2](1)とこれを加熱真空処理することにより、メタノールが除かれた[Ni(ima)_2](2)の合成に成功した。1は、単核ユニットがNH・・・O=C分子間水素結合で連結することにより、六角形の一次元細孔を形成している。一方、2はアモルファスで、メタノールを接触させると、再び結晶性錯体1を再生する。とくに、この錯体1の再生に伴って、新たな小分子の吸着活性を誘起させることに成功した。また、このアモルファス2を出発物質に利用することにより、柔軟な水素結合で連結された様々なネットワーク型金属錯体を系統的に合成できることを明らかにした。
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