研究概要 |
本研究は(1)骨の無機成分であるヒドロキシアパタイトへの金属錯体の吸着を調べ,高吸着金属錯体を開発,(2)培養ガン細胞を用いて抗ガン活性を調べ,(3)新しい作用機構を解明するとともに,骨ガンが痛みを伴うことから早急に開発が求められている骨抗がん剤候補薬へと展開することを目的としている. ヒドロキシアパタイトの成分であるリン酸に着目し、単座配位では不安定なリン酸を分子内キレート環により安定化させ、リン酸のみで配位した白金錯体を種々合成することに成功した。Pt(II)-ジアミノシクロヘキサン-メチレンジホスホン酸錯体のX線結晶構造を明らかにし,白金にホスホン酸が2個酸素ドナーで配位していることが確認された. 合成された白金(II)錯体の水中での加水分解に対する安定性を測定したところ、非常に長い半減期を示し、加水分解に安定であることが判明した。ヒドロキシアパタイト吸着量を測定し,吸着量と溶液濃度が比例することからラングミュア単分子膜吸着が起っていること,ラングミュアプロットから吸着量は吸着平衡定数Kに比例することを見出した.平衡定数Kはシスプラチンやカルボプラチンでは10前後と低いのに対し、リン酸基含有白金錯体では5倍以上大きく、リン酸官能基の優れた骨吸着能が明らかになった。 合成された白金(II)錯体のin vitro生理活性はヒトガン培養細胞の増殖50%阻害濃度IC50が14〜87μMとシスプラチンとカルボプラチンの間にあり,抗がん活性を有していた. DNAとの反応を、吸光,CD法で追跡したところ、3目後から急速に反応が進行することが判明した。反応後、マススペクトルによりグアニン部位に白金が結合していることを確認した。反応前の相互作用が抗ガン活性に重要と判断された。
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