伝導性をもつ多孔性結体高分子を作ると、小分子の吸着に伴って、ホストの伝導度が変化すると期待される。分子性化合物に伝導性を付与するための鍵は混合酸化状態の錯体を合成することにある。この日的に沿い、レドックス活性種として水車形ロジウム複核錯体を選び、中性錯体とそのカチオンラジカルから成る混合酸化状態の3次元ダイアモンド形ネットワーク構造の化合物を構築し、その物性を検討した。アセトアミデート架橋ロジウム複核結体とそのカチオンラジカル塩とョウ化物イオンを水中で反応させ、ダイアモンド形骨格をもつ混合酸化物錯体を得た。この錯体は室温伝導度3.8×10^<-4>S/cm、伝導の活性化エネルギー160meVの半導体であることを示した。この錯体と関連結体の電子スペクトル等の比較に基づき、この結体の伝導は"small polaron"機構によりもたらされ、隣接レドックスサイト間の相互作用が33meVと小さいものでることが示された。また、この錯体の室温における伝導度の圧力依存性を調べると、1気圧から2万気圧の範囲において、加圧とともに伝導度が単調に増大し、2万気圧では11×10^<-4>S/cmであった。この結体を真空下で加熱すると、結晶水が脱離して多孔性物質となることが見出された。この脱水錯体は炭酸ガス、アセチレン、メタノール、アセトニトリルなどの小分子を吸着する。元の含水錆体に較べて、脱水錆体の伝導度は著しく小さく、これに小分子を吸着させると吸着に伴って伝導度が増大する。しかし、ホスト骨格構造の強度不足のため、吸着に伴う伝導度変化の詳細な解析は出来なかった。また、あわせてアセトアミダート配位子をもつ開設電子構造のルテュウム複核錯体のハライド架橋一次元鎖構造の錯体の磁性も調べ、ゼロ磁場分裂が大きく、隣接サイト間相互作用が小さいことを見出した。
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