研究課題
水素・酸素燃料電池は、環境汚染物質を排出することなく水素が持つ化学エネルギーを高効率に電気エネルギーに変換できるため、国の内外で実用化に向けた研究開発が強力に押し進められている。しかし、水素の持つ潜在的危険性を考えると、安全で安価な触媒的オンサイト水素発生法が強く求められている。研究代表者は、可視光照射で有機金属イリジウムヒドリド錯体(1)の金属-ヒドリド結合が不均一化開裂してプロトン解離すること見いだし報告している。また、1の高濃度水溶液中、可視光照射に素早く応答して水素発生することを見いだしている。本研究では1をデンドリマー化して1の局所濃度を増すことで、高効率な光水素発生をを可能にすることを目的とする。また、これを用いた環境調和型触媒的光水素発生サイクルを構築する。そこで今年度は可視光酸発生を目的とした新規有機金属ヒドリド錯体の合成と同定を行い、有機金属ヒドリド錯体の光水素発生機構の解明と光水素発生サイクルの構築を行なった。また、太陽光有効利用を目指して有機金属ヒドリド錯体の多核錯体化も行った。具体的には、配位飽和ルテニウム(II)錯体と有機金属ヒドリド錯体との多核錯体を合成し、この錯体の光酸発生において、分子内励起電子移動を利用した著しい可視光感度の向上、すなはち太陽光エネルギーの有効利用が可能となることがわかった。一方、各種有機金属ヒドリド錯体に対し過剰量のギ酸ナトリウム存在下、錯体の可視光照射による触媒的光水素発生サイクルを構築し、生成する発生水素量および量子収率、ヒドリド錯体の再生反応速度を決定した。また、フェムト秒、ナノ秒レーザー時間分解過渡吸収スペクトルの測定により、配位子置換基の電子供与性の違いがMLCT励起状態の生成速度や光脱プロトン化反応速度、プロトン再結合反応速度に及ぼす影響を明らかにした。これらの結果から、光水素発生機構を明らかにして環境調和型触媒的可視光水素発生の制御指針を得た。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (5件) 産業財産権 (1件)
Chem Phys Chem 7・(in press)
Journal of Physical Chemistry A 109・41
ページ: 9356-9362
Journal of Physical Chemistry A 109・15
ページ: 3285-3294
Journal of Physical Chemistry A 109・14
ページ: 3174-3181
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 44・1A
ページ: 158-162