研究概要 |
金属錯体から成る分子性ガラスは,ガラス状態特有の透明性・均一性・加工性に加えて,反応特性や分子設計の観点からも優れており,機能性材料として期待できる。更に,分子構造と分子集合体の秩序・無秩序性との関連性を追及するという基礎科学的な立場からも意義深い。研究代表者はアシルアミノ酸の金属錯体が希土類やアルカリ土類の場合にはガラス状態を取りやすいこと,中心金属や単離法に依存して結晶化もしやすくなることを明らかにした。このような系は一方で液体状態では異方性を取りやすい,すなわち液晶になりやすい。この期間内では,特にランタノイド金属のうち,ランタン(III)を基本に据えて,発光性のユーロピウム(III)錯体について配位子の効果を調べた。配位子の幾つかは新たに合成した。アルキル鎖の長さの違いとガラス状態の取りやすさとは,アルキル鎖がC3-C7の中間領域が最もガラス化しやすく,それよりも短くなっても長くなっても結晶化する(異方性になりやすい)傾向にあることが分かった。また,極性基のアミノ酸について,アラニンをより嵩高いフェニルアラニンや水酸基のついたセリンにすると異方性が高まり異方性ガラスという興味深い状態をとることが分かった。これは,本プロジェクトのタイトルにふさわしく,液晶とガラス状態の中間的な状態である。また,同様にテルビウム(III)の分子性ガラスを創成し,溶液内での会合からガラス生成に至る過程を発光挙動ならびにNMR(常磁性緩和)から調べた。溶液内での等方的な会合が進んでガラス状態を生成することになる。この錯体が自己会合しやすいことから,更にマイクロエマルションや液晶中での界面活性剤との相互作用についても調べ,選択的相互作用に関する有意義な知見を得た。
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