研究概要 |
分子内の金属-金属結合に基づく強い相互作用を有するランタン型二核錯体を、π共役系を有する架橋配位子で連結することにより、磁性や伝導性において特異な性質を有すポリマー錯体を合成することを目的として研究を行った。本年度得られた結果を、以下の1、2に示す。 1.混合原子価錯体[Ru_2^<II,III>(O_2CR)_4]^+をOCN^-、SCN^-およびSeCN^-の一価陰イオンを架橋配位子に用いて連結したポリマー錯体[Ru_2^<II,III>(O_2CR)_4X]_n(X=OCN^-、SCN^-、SeCN^-)を合成した。RにCH_3(CH_2)_m-(m=4〜7)の長鎖アルキルを用いたところ、Ru_2^<II,III>内の三つの不対電子の架橋配位子(X)を介しての反強磁性的相互作用はX=OCN^-の場合は、zJ=-5.5〜-15cm^<-1>であり、mの値が大きくなるほどzJは負の大きな値になり反強磁性的相互作用は強くなることが示された。また、X=SCN^-およびSeCN^-の場合は、zJ=-1〜-4cm^<-1>であり、zJ値はmに依存して大きく変化することはなかった。また、電気伝導度を測定したところいずれのポリマー錯体も絶縁体であることが分かった。今後、長鎖アルキル基のmの値およびアルキル鎖の種類を変えてさらに検討を進める必要があることが示された。 2.N,N'-ジアルキルフェニルホルムアミジネートイオンを分子内架橋配位子とするロジウム(II)二核錯体を1,4-ジイソシアノベンゼン(1,4-dib)あるいはピラジン(pyz)と反応させたところ、ロジウム(II)二核と、1,4-dibあるいはpyzが交互に配列された目的のポリマー錯体を得ることができ、その構造を単結晶X線解析により決定することができた。分子内のRh-Rh金属結合に基づく二核内の電子状態がポリマーの性質にどう反映されるか今後さらに調べる予定である。
|