研究概要 |
2005年度は、本研究の主眼であるLiBeH_3合成のための高圧高温セルの導入を行った。予備実験として、関連物質であるNaAlH_4と非晶質BeH_2のin situ X線回折およびラマン分光測定、ブリュアン散乱測定を行い、これらの高圧高温挙動を調べた。 NaAlH_4は、既に水素貯蔵物質として応用研究が始まっているが、高圧では構造相転移に伴うさらなる水素貯蔵の可能性が指摘されている。これは、本研究のターゲットである未知物質LiBeH_3の高圧高温反応を予測する上でも興味深い。そこで、導入した高圧高温セルの発生圧力・温度を確認するための予備実験として、H_2およびHeを圧力媒体としてNaAlH_4の高圧実験を行った。その結果、室温において複数の高圧相(I,II,III)が出現し、その相転移圧はそれぞれ12,20,30GPaとなった。また、圧力媒体なしで高圧高温実験を行い、高圧相Iは、13GPaでは約280℃で高温高圧相となることが分かった。これらの正確な構造はまだ解析中であるが、ラマン分光スペクトルのAl-H伸縮振動の変化が少ないことから、AlのHに対する配位数に変化はないと予想された。これらの予備実験により、導入した高圧高温セルが目的の高圧高温条件(10GPa,500℃)を達成していることを確認するとともに、既知物質NaAlH_4でも、この高圧高温条件で多様な構造をとり得ることが明らかとなった。 近年、有機金属反応で高純度非晶質BeH_2の合成が報告されたため、これをLiBeH_3合成の出発試料とすることも視野に、高圧挙動と物性を調べた。ラマンスペクトルでは、約50GPaで1400cm^<-1>付近のH-Be-H bending modeが現れ、BeH_2分子の重合が示唆された。 本年度のNaAlH_4とBeH_2の高圧高温挙動の知見をもとに、次年度でターゲット物質LiBeH_3の合成に取り組む。
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