酪農地帯の河川等における女性ホルモン物質の汚染状況やその毒性・分布状況を調査するために本年度は主に、(1)エストラジオール類の高感度分析法の開発と、2)エストラジオール等の汚染物質を水中から濃縮するための方法論の開発を行った。その結果以下のような成果が得られた。 1)分析法の開発においては、女性ホルモン、環境ホルモン物質及び農薬類定量のための分析法の開発を行った。分析法としてエンザイムイムノアッセイ法とカーボンナノチューブ修飾電極を用いる電気化学検出による方法の二つについて検討し、何れも高感度な分析法を開発することができた。固相濃縮法等を組み合わせることによって、実試料に適用できる方法であることを確認し、これを酪農地帯との比較のために都市河川中のエストラジオール等の分析に適応し、通常の河川ではその濃度はかなり小さいものの、下水処理場の処理水が流入する河川ではその濃度が増加していることが確認された。 2)汚染物質の濃縮法の開発としては、エストラジオールやアニリン等をカーボンファイバー電極に酸化濃縮する方法、及び活性炭内包アルギン酸ゲルにクロロフェノール類を濃縮除去する方法について検討し、何れも良好な濃縮効率を達成した。 これらの成果は、次年度における酪農地帯の河川水、地下水中の女性ホルモン物質濃度の調査やその対策を実施する上で重要なものである。
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