クラウン化スピロベンゾピラン誘導体を含み陰イオン界面活性剤より成るミセルは球状であることが想像されるが、実際にそのミセルの存在状態、形状、臨界ミセル濃度などの基礎的性質を知ることは、今後のミセル形成に利用する界面活性剤の設計ならびに、ミセルの有機溶媒補足剤としての応用の可能性を探る上で極めて重要である。 このような観点から、蛍光プローブとして、疎水性部位であるミセルの内部への直接の侵入が可能なピレンと、ミセル界面に存在できると考えられる1-アニリノナフタレン-8-スルホン酸塩などを用いる測定法により、ミセルの最も基本的な性質である臨界ミセル濃度(cmc)を調べた。その結果、ミセルのcmcは、12-クラウン-4誘導体を含まない系<12-クラウン-4誘導体を含む可視光照射時<12-クラウン-4誘導体を含む暗時、の順に増加した。また、ミセルの会合数は、ピレンを蛍光プローブとして、消光剤にドデシルピリジニウム塩を用いて測定し、12-クラウン-4誘導体を含まない系>12-クラウン-4誘導体を含む可視光照射時>12-クラウン-4誘導体を含む暗時、の順にcmcの結果と全く逆になることがわかった。さらに、ミセルの形状や大きさについては、動的光散乱分光法やミセル溶液を凍結乾燥させたものを透過型電子顕微鏡により観察した。ミセルの形状は当初予想した通り球状であり、12-クラウン-4誘導体の有無と、12-クラウン-4誘導体を含む場合の光照射の有無により粒径が変化することを認めた。 また、ミセルの中心部分の脂溶性鎖との相互作用により有機分子を溶解する性質が、スピロピラン部位の光照射による伴う極性変化に非常に強く影響を受けることも確かめた。
|