本課題は、既存の手法とはまったく異なり、表面増強赤外吸収(SEIRA)現象および赤外全反射吸収(ATR)現象を応用する新しい原理に基づいて、多成分混合微粒子系の粒子サイズを、成分分別することなく各成分ごとに同時に測定する手法を開発することを目的とする。本申請では、これまでに行った、単一成分・単一粒径のシリカ粒子に対する基礎実験をもとに、多成分混合した粒度分散のある微粒子系への適用性を明らかにする。本年度は交付申請の実施計画書に基づいて研究を行い以下のような結果を得た。 1.測定系の高精度化と単粒子層形成法の研究(吉留、胆後) 本測定法の原理から、微粒子はATRプリズムや金属薄膜表面に単粒子層以下で存在することが必要である。平成16年度末に共同研究者の肥後が新規に購入した高感度反射アタッチメントの適用により測定の効率化と高精度化を計った。まず始めに新しいアタッチメントを粒径計測へ用いる準備として、一般的な反射測定に適用し、従来型より約10倍高感度であることなどの特性評価を得た。更に新しいアタッチメントに種々のプリズムを取り付ける治具の設計試作を行った。単粒子層形成法の基礎実験として、単分子の表面存在状態・形態について調べ、金属銀上でのp-ニトロ安息香酸およびアルミナ上でのアントラキノンカルボン酸の状態・形態を明らかにした。 2.多種類の微粒子についてATR信号-粒径の関係を調べる(吉留) これまでの研究で、シリカについてATR信号の粒径依存性が求められている。同様に旧装置により、アルミナについてもATR信号-粒径の関係を求めた結果、信号の粒径依存性が小さいことがわかり、今後の課題となった。 3.多成分微粒子系へのATR法の応用(吉留) シリカやアルミナを混合した粒径の異なる2成分微粒子系の粒径の同時測定を行った結果、ATRスペクトル上では成分分割できることがわかり、本法の適用性が示唆された。
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