研究概要 |
アルツハイマー病(AD)のADアミロイド精製過程においてアミロイドタンパク質以外に未知のペプチド、NAC (Non-AβComponent of AD amyloid)が見出され、その前駆体NACP(NAC Precursor、別名:α-シヌクレイン)がクローニングされた。その後、NACとAβが実際に混合してアミロイド線維を形成する事実などが報告された。また,NACP変異体(A30P, A53T, E46K)が、家族性パーキンソン病(PD)の原因遺伝子として同定され,NACPがPD診断上欠かせない封入体Lewy小体の主要構成タンパク質であることが判明した。 前年度の研究より、NACPタンパク質のアミロイド形成初期段階における構造変化及びアミロイド線維形成に及ぼす点変異の影響について,チオフラビンT(ThT)蛍光,CDスペクトル,NMR, X線小角散乱(SAXS)等を用いて観察し,その機構を原子・分子レベルで解析した。アミロイド線維形成過程における構造変化をCD及びSAXSにより観察したところ,等モル楕円率点および等散乱点を持たないことがわかった。またCDスペクトルの経時変化についてSVD解析を行なった結果,3個から5個の独立な成分が存在することが判明した。以上の結果より,アミロイド線維形成の初期過程において中間状態の存在が強く示唆された。 本年度は,これらの結果を踏まえて,アミロイド線維形成の初期過程における線維形状の詳細を調べるため,電子顕微鏡を用いて野生型およびE46Kの初期段階におけるアミロイド線維形成の経時変化を観察した.この結果,野生型と比べてE46Kの方が初期段階に特徴的な短い線維の形成が早い段階で起こり,量的にも野生型と比較して著しく多い事が判明した.既にアミロイド繊維形成の初期過程において中間体の存在が示唆されている事から,今回観察された短い線維の形成は中間体の形成に密接な関わりがあるものと考えられる.
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