研究概要 |
1)酸性染料TBPEとアルブミン,HSA)のメタクラマジー現象発現機構の検討 昨年の研究では二塩基酸染料TBPBとアルブミンとのイオン会合反応条件を検討した。しかしTBPBは2つの酸解離定数をもち、会合が複雑であることが判明した。そこで本研究では解離定数が1つの一塩基酸染料Tetrabromophenolphthalein ethyl ester(TBPE)を用いて異染色性(メタクラマジー)の検討を行なった。TBPEのpKaは4.2であることを酒井らは求めているが、pH3.5>においてはTBPE・Hの分子型として存在し、水溶液では溶けない。しかし非イオン界面活性剤Triton X-100の存在下でミセル内に可溶化することが判明した。またTriton X-100を共存させるとpH3付近にもかかわらずTBPE・Hとイオン会合し、λmaxが410nmから610nmと大幅にred shiftを起こすことが分かった。また610nmにおいてはreagent blankの吸収は殆どなく、TBPE-HSA会合体の吸光度のみを測定することが可能であることがわかった。 2)1)の検討はバッチマニュアル法であることから、イオン会合反応場は大きく、また試薬の廃棄量は多く(1試料につき25mL使用)、また再現性は十分とはいえない。そこで、酒井らが研究を進めている「連続流れ場」を利用するフローインジェクション法での導入について検討した。流路は単純な2チャンネルとし、1つの流路にはキャリヤー(蒸留水)を、もう一方には試薬(Triton X-100、TBPE,緩衝液の混合溶液)をダブルプランジャーポンプを用いて0.9mL/minの流速で送液した。その結果反応場は0.25i.d.x 5mのテフロンチューブを用いれば十分に発色することが判明した。またTriton X-100、TBPEの濃度とも、それが増加すると水を対照にしたベースラインの上昇が見られた。種々の判明した条件下で作成した検量線は0-12mg/dLの範囲で良好な直線性を示し、R^2=0.998が得られた。また3.0mg/dLHSAの10回測定で求めた変動係数は1.2%で極めて再現性・精度の高い方法を確立することが出来た。このシステムで測定すると1時間に30試料を分析することが可能である。
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