研究概要 |
目的:ホウ酸イオンを中心イオンに用いたキラル配位子交換法を検討し、(S)-3-アミノ-1,2-プロパンジオール(SAP)とホウ酸を泳動緩衝液としたキャピラリーゾーン電気泳動法により、1,3-ジオール構造を有するDL-パントテン酸(DL-PTA)を光学分割できることをすでに見出した。今年度は、(1)本キラル配位子交換法のメカニズムを明らかにすること、及び、(2)他のジオール化合物のキラル分離法を検討して本法の応用範囲を広げることを目的とした。 結果:(1)^<11>B NMRスペクトルの解析により、[B(SAP)(D-PTA)]複合体は[B(SAP)(L-PTA)]複合体よりエンロトピー的に安定化されていることが分かった。両複合体には不斉ホウ素原子に由来する(S)-体と(R)-体が可能であるが、半経験的分子軌道計算によりいずれも(S)-体が安定であることがわかった。(S)-[B(SAP)(L-PTA)]複合体は折りたたまれた構造であるのに対し、(S)-[B(SAP)(D-PTA)]複合体は直線的な構造を有する。両複合体の電荷は同じであるが、電気泳動時における水溶液中での抵抗(摩擦力)は[B(SAP)(D-PTA)]複合体の方が低くなる結果、電気泳動移動度に差ができるものと推定された。 (2)(1S,2S,3R,5S)-ピナンジオールをselectorとし、ホウ酸を中心イオンに用いたミセル導電クロマトグラフィーにより、1-フェニル-1,2-エタンジオールなどの中性ジオール化合物をキラル分離できることがわかった。 今後:本法の応用範囲をさらに広げるため、ポリオール構造をもつ糖類などへの適用を検討する。
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