研究概要 |
1.Prins型環化付加反応 触媒量の塩化白金と銀トリフラートの存在下、(Z)-6-トリメチルシリル-5-ヘキセン-1-オールとアルデヒドが効率良く反応し、2,3-二置換テトラヒドロピランを高トランス選択的に与えることがわかった。本反応は、基質であるビニルシランのメチレン鎖を1つ減らしたり、メチレン鎖上に置換基を導入することで、二置換テトラヒドロフラン類や多置換テトラヒドロピラン類の立体選択的合成に利用できた。ビニルシランのアリルシランへの異性化、続くPrins型環化付加反応により、環状エーテルが生成すると考えられる。同様の反応は、シリル基を持たない5-メチル-5-ヘキセン-1-オールを用いても進行することがわかった。この反応も多置換テトラヒドロピラン類の高立体選択的合成に応用できた。反応機構について検討した結果、水酸基とホルミル基がアセタール化を起こした後、二重結合の移動と分子内Prins反応によりテトラヒドロピランが生成すると考えられる。 2.ヒドロシランを用いるラジカル反応 フェニルシランと触媒量の酢酸インジウムを用いることで、ブロモおよびヨードアルカン類の脱ハロゲン化が、穏和な条件下、効率良く進行した。この還元反応はインジウムヒドリド種を鍵中間体とする、ラジカル連鎖機構で進行すると考えられる。本触媒系を利用した分子間ラジカル付加反応について検討した結果、2,6-ルチジン、空気、水などの存在下で、ヨードアルカンと電子不足アルケンの分子間反応を効率良く行うことができた。 3.アルキンとシリルエノラートの分子内反応 アルキニル基を有するシリルエノラートに、水存在下、塩化インジウムを作用させると、三重結合に対するシリルエノラートの付加が効率良く進行した。水の代わりにヨウ素を用いると、ヨウ素化された環化体が得られた。本反応はビニルインジウム中間体を経由すると考えられる。
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