研究概要 |
本年度の研究では、電子材料などへの応用が期待される遷移金属フラグメントの2次元配列を期待して、ポリアレーン上に遷移金属フラグメントを配列するための方法論の開発を行った。ポリアレーンのモデルとしてトリフェニレンを用いたとき、ルテニウム(0)フラグメントをトリフェニレン上に、1つ[Ru(1,5-COD)(η^6-triphenylene)]、2つ[[Ru(1,5-COD)]_2(μ-η^6:η^6-triphenylene)]および3つ[[Ru(1,5-COD)]_3(μ-η^6:η^6:η^6-triphenylene)]選択的に導入することに成功し、トリフェニレンが6π、12πおよび18π電子供与体として働き、最大ですべてのπ電子にルテニウムフラグメントを導入可能である事が明らかとなった。これらの錯体は、X線結晶構造解析、元素分析、NMRなどにより同定した。これらの錯体において、ルテニウムフラグメントは可逆的に移動させることができることも明らかとなった。また、トリフェニレンを基盤としたルテニウム-クロム異種金属クラスターの合成も可能であり,[[Ru(1,5-COD)][Cr(CO)_3](μ-η^6:η^6-triphenylene)]も新規に合成する事ができた。この錯体においても、ルテニウムフラグメントが可逆的にアレーン間を移動することが明らかとなった。これらの研究成果により、アメリカ化学会Organometallics誌に論文が掲載されるとともに、日本化学会第86春季年会においてB講演1件、一般講演1件の学会発表を行った。
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