研究概要 |
1.ホスフィノイル置換ビスオキサゾリン誘導体の合成とアリル化に対する触媒機能の検討 L-及びD-セリンを出発物質とし、ジフェニルボスフイノイル化した後、2,2-ジシアノプロパンあるいは2,6-ジシアノピリジンとの縮合により高収率でボスフィノイル置換ビスオキサゾリン(PM-Box)を合成することに成功した。そこで、PM-Box-ヨウ化亜鉛錯体10mol%存在下、アリルトリクロロシランによる各種アルデヒドのアリル化を行ったところ、化学収率48〜74%,エナンチオーマー過剰率最高86%でホモアリルアルコールを得た。更に、リン原子団を有しない4-ベンツヒドリルメチルビスオキサゾリンを用い同様の反応を行ったところ、ホモアリルアルコールの収率は4%、13%eeであったことから、本反応はルイス酸-ルイス塩基のdual activation,機構により進行していることが示唆された。そこで、このことを明らかにするために、PM-BQX-ZnI_2錯体とアリルトリクロロシランの等モル混合物の31P-nmrを測定したところ、大きく低磁場シフトしていることが明らかになった。これらの結果は現在学会誌に投稿すべく論文を執筆中である。 2.ヘテロ原子置換ビスオキサゾリン誘導体の不斉シアノシリル化、シモンズ-スミス反応の検討 本触媒の有効性を検討するために、イミン類のシアノシリル化反応(Strecker reaction)に応用したところ、PM-Box/Cu(OTf)2錯体3mol%存在下N-ベンズヒドリル-ベンジリデンアミンの反応で牧率91%、90%eeという良好な結果を得た。さらに、本反応を反応性が低く、また高選択的反応例が少ないケトイミンに応用したところ、高收率且つ高エナンチオ選択的に反応が進行する事を見いだした.例えば、アセトフェノン-N-ジフェニルフォスフィノイルイミンの場合收率87%、96%eeという結果を得た。 上のように、科学研究費補助金交付申請書に記載した研究を順調に進める事ができた。
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