研究概要 |
既に確立されたかに見えるカルボニル基のエナンチオ選択的活性化に基づく不斉合成反応も多くの制約を抱えている。特に、使用可能なカルボニル化合物の構造面での制約は、実際これらの反応を複雑な構造を有する生体機能分子の合成に使用しようとする際に直面する深刻な問題である。本研究では、これまでの研究で明らかとなったオキサザボロリジノン(OXB)触媒の諸特性を活用することで、ケトンカルボニル基の活性化によって触媒される不斉合成反応の開発をめざした。 不飽和ケトンの不斉Diels-Alder反応:OXB触媒が、不飽和ケトンの不斉Diels-Alder反応において高いエナンチオ選択性を示すばかりでなく、従来困難であったベンザルアセトンなどの低反応性ジエノフィルや、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンをはじめとする低反応性ジエンの反応を可能にする十分なLewis酸活性を有することが明らかとなった。また、OXB触媒によるカルボニル基の活性化モデルを提示した。 ケトンの不斉Aldol反応:ジメチルシリル基の利用によりアセトフェノンとシリルケテンアセタールの不斉アルドール反応が、OXB触媒の存在化、90% ee程度のエナンチオ選択性で進行することが明らかとなった。OXB触媒の構造最適化を実施し、0-ビフェノイル誘導体が最良の結果を与えることが明らかとなった。 フランへの不斉Diels-Alder反応:フランのDiels-Alder反応により得られる7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エンは、有用な合成中間体であるが、キラルルイス酸触媒反応による不斉合成の報告はわずかである。OXB触媒により、フランとビニルケトンのDiels-Alder反応が高エナンチオ選択的に進行することを見いだした。また、高選択性の発現には、トルエンなどの低極性溶媒の使用が必須であることもわかった。
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