研究課題
基盤研究(C)
立体および電子的効果を利用した、新規金属種の合成と反応性を検討し、以下の知見を得た。1 インジウムの還元的利用による炭素-炭素結合形成低原子価インジウムをハロカルボニル化合物と含酸素カルボニル化合物の縮合反応に用いることで、きわめて高い立体選択性でキレーションコントロールされたラクトンを得ることができた。従来では合成困難であった多官能性化合物を一段で用意に合成することができた。活性種である有機インジウム種のスペクトル的解析に成功し、反応機構を緻密に決定することができた。2 インジウム-ケイ素複合ルイス酸の反応への利用インジウムとケイ素を複合させることにより、単独では示すことのない強いルイス酸性を発現させることに成功した。この結果、アルコールの直接アリル化反応を達成した。スペクトル的研究により、これらの複合作用を緻密に解析することに成功し、ケイ素上に高いルイス酸性を有する化学種となっていることが判明した。アルコールだけでなく、基質にシリルエーテルを用いても同様の反応が効率よく進行した。3 かご型金属錯体の合成立体規制されたホウ素ルイス酸による触媒反応を検討した。ヘテロDiels-Alder反応に対して、かご状ルイス酸は高い触媒活性を示した。一方、類似の通常の平面ホウ素ルイス酸は全く触媒活性を示さなかった。すなわち、かご状の立体規制がルイス酸性の向上と触媒化能を生み出した。トリアリール骨格を有するかご状ホウ素ルイス酸をこれまでに合成していたが、骨格の根元原子を炭素からケイ素に代えた新しいかご状ホウ素錯体の合成に成功した。これは、根元が炭素の錯体と比較して、高い配位子交換能力を有し、触媒としてきわめて高い効率を示すことがわかった。ルイス酸性自体は低下しているが、反応促進には十分な性状を保っていることがわかった。
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