研究概要 |
(R)- or (S)-2-acetoxy-4-phenyl-3-buteneを反応基質とし,求核剤をグリシンエステル誘導体あるいはアラニンエステル誘導体としたパラジウム触媒アリル位アルキル化反応を行い,位置選択性とジアステレオ選択性の双方を同時に制御する事に成功し,3級3級あるいは3級4級連続不斉炭素中心を有するアルキル化体を得ることに成功した.具体的にはパラジウム触媒において,2-(diphenylphosphino)benzoic acidを配位子とすることで本反応の位置およびジアステレオ選択性の制御に成功し,ほぼ完全な位置選択性(>99%)およびジアステレオ選択性(>99%)でアミノ酸エステル誘導体を定量的に得ることに成功した.また,ここで得られたアルキル化体は,数段階の化学変換によってアスパラギン酸誘導体へと変換する事にも成功している. 以上の結果は,本研究の申請時に計画・予想した通りに計画を遂行し,予定通りに得られた結果である.本研究結果は既に論文として投稿し出版されている. 次に,申請段階で予定した,アズラクトンなどを求核剤とした位置およびジアステレオ選択的アリル位アルキル化反応の実現と4級アミノ酸の合成を行っている.現段階では,様々な反応条件(配位子の最適化,塩基およびカウンターカチオンの選択,溶媒の検討など)を行っており,幾つかの組み合わせにおいて90%以上の位置およびジアステレオ選択性を実現している. また,本反応における立体選択性発現機構の解明においては,反応中間体と想定されるπ-アリルパラジウム中間体の合成を完了し,その構造解析を行っている.すでにNMR測定によって,2-(diphenylphosphino)benzoic acidが予想通りにパラジウムに配位し,π-アリルパラジウム錯体を形成している事を確認している. 以上,申請時の予定通りに研究が進行し,第一段階のグリシンあるいはアラニンエステル誘導体を求核剤とした位置およびジアステレオ選択的パラジウム触媒アリル位アルキル化反応に成功した.また,そのアルキル化生成物を4級アミノ酸誘導体へと変換する事に成功した.さらに,反応中間体が予想通りにπ-アリルパラジウム錯体である事を確認できた.
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