研究概要 |
本年度は、ゲスト分子を取り除いても空孔を安定に維持できる骨格を持つキラル超分子多孔体を合成し、それを利用する不斉合成反応を行った。まず、金属イオンとの配位結合に不可欠なカルボキシル基、ゲストとの水素結合のための水酸基、さらに包接空間を仕切るためのフェニル基やナフチル基を持ち、さらに、分子にキラリティーを導入するためのビナフチル基を有する有機配位子を設計した。具体的には、5,5'-ジカルボキシ-1,1'-ビ-2-ナフトール(1)および6,6'-ジカルボキシ-1,1'-ビ-2-ナフトール(2)を合成し、得られたラセミ体をキラルカラムを用いて光学分割した。こうして得られた光学活性な1および2をジメチルアニリンの存在下、硝酸銅と反応させることにより、それぞれキラルな銅(II)錯体結晶(3および4)を得た。 このようにして合成したキラルな銅(II)錯体結晶(3および4)を用いて、シクロヘキセンオキシドへのアニリンの不斉付加反応を検討した。銅(II)錯体結晶(4)を触媒に用いて無溶媒条件下、室温で反応を行うと、相当するアミノアルコールは生成するものも、光学純度は5%以下の結果となった。これに対して、銅(II)錯体結晶(3)を触媒に用いて同じ反応を行うと、光学純度38%の光学活性アミノアルコールが生成することが明らかとなった。
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