研究課題
我々は環境に調和した触媒プロセスの構築を目的として、温和な条件下における有機触媒および金属錯体触媒を用いるbiomimeticな酸化反応の開拓を行っている。今回、過酸化水素酸化条件下におけるアミンの酸化的シアノ化反応によるα-アミノニトリルの直接合成反応、およびフラビン触媒を用いるBaeyer-Villiger触媒反応を行うことに成功した。第3アミンをルテニウム触媒存在下、NaCNあるいはHCNを共存させて、過酸化水素水溶液で酸化すると、相当するα-アミノニトリルが効率良く得られた。これにより、過酸化水素酸化条件下で、第3アミンのα-位に、炭素-炭素結合を形成させることに成功した。この反応は、直接的なC-H結合活性化とC-C結合形成を過酸化水素酸化条件下で行った最初の例である。速度論の研究および重水素効果の実験などからこの反応の機構はRu=O活性種により生成するイミニウムイオンルテニウム中間体の生成を含んでいることが明らかになった。生成するα-アミノニトリルはα-アミノ酸や1,2-ジアミンの重要な合成中間体である。我々は1989年ルミフラビンは触媒になることを発見している。今回、この有機触媒を用いて容易にBaeyer-Villiger酸化反応を高い化学選択性で行えることを見出した。実際、フラビン触媒反応をスルフィドとケトンの混合物に対して行ったところ、Baeyer-Villiger酸化物が選択的に得られた。この反応は4a-ヒドロパーオキシフラビンが生成し、これが反応するという以前に提唱した機構が働いている。フラビニウムカチオンFIEt^+は亜鉛により2電子還元され、アニオンFIEt^-を生成する。これが酸素と反応してフラビン4a-ヒドロパーオキシアニオンFIEtOO^-を生成し、これがケトン求核的酸化反応を行い相当するラクトンを生成する。また、エナンチオ選択的な不活性炭化水素のC-H結合の直接酸化反応が行えることを見出した。
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