研究概要 |
温和な条件下における酸素酸化は現在においても難題のひとつである。我々はフラビン酵素のシミュレーションにより、第ニアミンやスルフィドなどの有機物を5-エチル-3-メチルルミフラビニウム過塩素酸塩触媒とヒドラジンの存在下、2,2,2-トリフルオロエタノール中で酸素(1気圧)または空気で酸化すると、極めて高収率で高効率に(TON,19,000)で酸化生成物が得られることを見いだした。副生成物は環境に無害な水と窒素だけである。この反応の機構を詳細に調べて解明した。さらに還元剤としてヒドラジンの代わり亜鉛を用いることにより、ケトンのBayer-Villiger酸化反応を選択的に酸素で行うことに世界で初めて成功した。この酸化触媒反応はユニークであり、スルフィドの共存下Bayer-Villiger酸化反応を選択的に行うことができるという非常に有用な特徴がある。 一方我々はシトクロムP450酵素のシミュレーションを行い、酸素酸化反応を温和な条件下で行わせ、生成する中間体を炭素求核剤で捕獲することに成功した。3塩化ルテニウム触媒の存在下、酸素(1気圧)下、第3アミンとNaCNをメタノール・酢酸溶媒中で反応させると、α-アミノニトリルが高収率で得られた。この反応の機構を解明して、反応系中に過酸化水素が生成していると考えられることから、ルテニウム触媒を用いる第3アミンの酸化的シアノ化反応を過酸化水素水で選択的に行うことに成功した。この反応は一般性があり、生成するシアノアミンはアミノ酸などの有用な合成中間体となる。さらに、ビナフチルルテニウム錯体触媒を用いる新しい形のオレフィンの酸化触媒反応や、キラルなBinaphthyl Strapping Unitを有するマンガンサレン錯体を触媒とする炭化水素の直接的な不斉ヒドロキシ化反応を見出している。
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