研究概要 |
N-トリフェニルメタクリルアミド(TrMAM)の誘導体としてN-(4-ブチルフェニル)ジフェニルメチルメタクリルアミド(BuTrMAM)を合成し、メントールなどの光学活性な溶媒中で温度を変化させてラジカル重合を行った。得られたポリマーは、クロロホルム、テトラヒドロフランなどの溶媒に可溶であった。ポリマーの^1H-NMRは非常にブロードで、立体規則性を見積もることはできなかったが、重濃硫酸に溶解させるとポリメタクリルアミドに変換され、その^1H-NMRよりほぼ100%イソタクチックであることがわかった。ポリマーは光学活性であり、D線での比旋光度は約10°と、一方向巻きのポリメタクリル酸トリチルのそれと比べると30分の1程度であった。この旋光性はポリマーのらせん構造によると思われるが、らせんの片寄りはあまり大きくないと判断される。亜鉛のアート錯体であるt-Bu_4ZnLi_2と光学活性なハロゲン化合物からなる開始剤に用いてBuTrMAMのアニオン重合について検討した結果、ポリマーが生成し、比旋光度が20°を越えるポリマーが得られることがわかった。ラジカル重合で得られたポリマーよりらせんの片寄りは大きいと考えられる。また、N-(2,6-ジエチルフェニル)メタクリルアミドやN-(2,6-ジメチルフェニル)メタクリルアミドのメントール中でのラジカル重合においても光学活性なポリマーが生成することを見いだした。一方、N-フェニルメタクリルアミドやN-(2-メチルフェニル)メタクリルアミドは、同様の条件では光学活性なポリマーを与えず、不斉な構造をポリマーに誘起するには、2および6位の両方に置換基が必要であることが明らかになった。
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