研究概要 |
ポリカテナンを合成するためには、(1)カテナンをモノマーとし、(2)協奏的反応で環形成し、(3)高分子反応で渡環結合を切断しなければならない。協奏的環化付加反応として6π電子環状環化反応を用いることを検討した。種々のα,β-不飽和ケトンのMcMurry反応による還元的カップリングを検討した。芳香族ケトンを用いると生成するトリエンが非常に不安定であったが、脂肪族のケトンを用いることで取り扱い可能なトリエンが得られた。その熱環化反応を検討したが、中央の二重結合がシス体のものは定量的に環化したものの、トランス体のものは未反応で残った。そこで、トランス体をシス体に異性化させながらの環化反応を検討した。しかし、高圧水銀ランプによる光照射やラジカル逓伝体の存在下での反応ではいずれも複雑な分解生成物を与えたことから、穏やかな条件下で重合などを起こさないように異性化を進行させる必要があるものと考えられる。協奏的環化反応としてDiels-Alder反応を用いた場合の環開裂反応について検討した。ビシナルにエステル基を有する炭素-炭素単結合の還元的開裂を検討したが、ひずみが無い状態では開裂させることができなかった。ひずみの導入は重合効率の低下を招くのでポリカテナン合成の単位反応としては不適切であることが分かった。そこで、ジエノフィルとしてアゾ化合物を用いたヘテロDiels-Alder反応を利用し、窒素-窒素単結合の切断について検討した。電子密度が高い窒素-窒素結合もBirch条件下では切断できたが、定量的な切断には窒素-窒素結合の電子密度が低い必要があり、反応性の高く不安定なアゾジカルボニル基を持つカテナンをモノマーとしなければならない。そこで、アゾジカルボニル基を酸化的に作りながらヘテロDiels-Alder反応を行なうこととし、1,3-ジエンを2つ有するマクロサイクルの合成を検討した。
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