申請者らが新規に見出したポリエーテル系感熱応答性高分子、およびそれらとポリエチレンオキシド(PEO)とのジブロック共重合体について、応用展開に必要な基礎物性の取得と、応用例として機能性表面の構築を試み、以下の結果を得た。 ・Poly(ethyl glycidyl ether)-block-poly(ethylene oxide)の感熱応答挙動について検討し、希薄溶液では温度上昇に伴って15℃以上でコア-シェルミセルを形成し、40℃以上でミセルが凝集する2段階の会合挙動を示すことを、濃厚溶液では20℃以上でヘキサゴナル液晶相、50℃でラメラ液晶相を形成することを明らかにした。 ・主鎖末端にレドックス基フェノチアジン(PT)を導入した感熱応答性ジブロック共重合体の相転移温度は感熱応答ブロックが長いほど、そのPEOブロックに対する長さ比率が大きくなるほど低温にシフトした。PT基の酸化電位は転移温度より高温で正電位シフトし、酸化電流は転移温度で最大値を示した。電流の変化はコア-シェルミセル形成に伴う拡散係数の低下を、電位シフトはミセルコアの疎水環境にPT基が取込まれることを反映することがわかった。 ・Poly(ethoxyethyl glycidyl ether)を固定化した金基板表面における水の接触角(CA)は温度上昇に伴ってある温度で不連続に増加した。この変化は温度変化に対して可逆であり、脱水和と同時に起こる高分子鎖のコイル-グロビュール転移を反映している。表面における転移温度は固定化高分子の混み合い度が大きいほど高い傾向があり、分子間相互作用や高分子鎖の運動性が表面転移温度の決定因子であることを示唆した。この固定化した高分子末端に導入したPT基の応答は温度依存性を示すと同時に、電解質中に溶解しているグルコースオキシダーゼに対して電子メディエーターとして機能することがわかった。
|