研究概要 |
自己組織化による分子集積により,機能の増幅や新しい機能が誘起されることが知られている。このような分子集合体は物理的、熱的に不安定であり、その構造変化を利用した分子認識、センサーなどへの応用が試みられている。一方で分子集合構造を安定化し材料開発をする研究も活発である。本研究では、特にキラル配向性分子集合体により誘起、増幅される光機能の固定化による光学材料への応用について検討した。配向性分子として二鎖型グルタミド脂質を用いた。二鎖型グルタミド脂質は分子内に3つのアミド結合が分子間で水素結合を形成することにより、特異な配向構造を形成する。機能性部位を導入した脂質分子を溶媒中に分散させると自己組織的に分子集合体を形成し、その配向構造に基づく機能の増幅がみられる。 ピレニル基を導入した脂質は、有機溶媒中で分子配向体を形成し、ピレニル基のスタッキングに基づくエキサイマー発光・増幅光学活性を発現した。この溶液にPMMAなどのポリマーを混合させ、ガラス基板上にキャストし、フレキシブルなポリマー複合体を得た。このフィルムは溶液同様エキサイマー発光・増幅光学活性を示した。機能性部位の選択、あるいは脂質分子をホスト、色素分子をゲストとするホスト-ゲストシステムを利用することで、ポリマーフィルムの光機能を容易に制御できることを確認した。 また、無機分子であるシクロホスファゼンに脂質分子を集積、固定化させることで新たな分子素子の開発や脂質分子のシリカ界面への固定化による分子認識材料への応用についても検討した。
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