研究概要 |
当該年度では、磁性アニオンMX_4^<2->(M=Mn,Co;X=Cl,Br)を用いて、以下に示す新しいBDH-TTP塩の構造解析・物性評価を行った。 1.(BDH-TTP)_4MnCl_4(H_20)_x:この塩のドナー層はθタイプで配列しており、アニオンは多量体を形成していた。電気抵抗は、室温から約200Kまでわずかに減少し、その後、徐々に増加した。磁化率測定では、反強磁性的相互作用(θ=-3.3K)が観測された。 2.(BDH-TTP)_4MnCl_4(H_20)_4、(BDH-TTP)_4Mn_0.66Co_0.33Cl_4(H_20)_4:これらの塩は同型であり、ドナー配列はκタイプであった。両者の塩は4.2Kまで金属的挙動を示し、磁気的挙動は常磁性的[MnC1_4(H_20)_4塩θ=0.0056K;Mn_0.66Co0_.33Cl_4(H_20)_4塩,θ=-0.093K]であった。 3.(BDH-TTP)_4MnBr_4(CH_2Cl_2),(BDH-TTP)_4MnBr_4(CH_2Br_2),(BDH-TTP)_4CoBr_4(CH_2Cl_2):これらの塩は同型構造を有し、ドナー分子はκタイプで配列していた。MnBr_4(CH_2Cl_2)塩とMnBr_4(CH_2Br_2)塩は、4.2Kまでの金属的挙動と常磁性的挙動[MnBr_4(CH_2Cl_2)塩,θ=-0.076K;MnBr_4(CH_2Br_2)塩,0=-0.048K]を示した。CoBr_4(CH_2C1_2)塩の伝導挙動はMnBr_4(CH_2Cl_2)塩およびMnBr_4(CH_2Br_2)塩とは異なっており、その電気抵抗は150K付近まで減少した後、約40Kまで温度依存性の小さな挙動を示し、その後、4.2Kまで上昇した。しかし、4.2Kの抵抗値は室温での抵抗値を超えなかった。この塩の磁化率測定では、弱い反強磁性的相互作用(θ=-0.54K)が観測された。
|