研究概要 |
H_2中のCOを選択酸化するPROX(preferential oxidation)触媒としてはRu, RhがPtより優れた特性を持っていることは衆知でありRu/Al_2O_3をベースとしたものが実用触媒として使われている。高分子電解質膜水素燃料電池(PEMFC)に使われる水素ではCO濃度は電極の耐被毒性の限界から10ppm以下にする必要がある。COの被毒に強いPt-Ru電極でも50ppmのCOを含む水素を用いた場合には出力低下が著しいと報告されている。そのため、メタノールや炭化水素の改質で得た原料水素のCO(5,000〜10,000ppm)を10ppm以下まで低減するPROX(preferential oxidation)触媒の開発が重要となる。現在、定置型水素燃料電池で使われているPROX触媒はRu/Al_2O_3あるいはRuPt/Al_2O_3触媒であり130℃付近で使われている。本研究は従来に無い視点からRu以外の新しいPROX触媒の開発を行ない、室温でも高い活性を示すPROX触媒FeOx/Pt//TiO2の開発に成功した。即ち、1wt.%のPt/TiO2にTiO2同等あるいはそれ以上のFeOxを被せることで元のPt/TiO2とは比較にならない高活性と高選択性が得られ、室温でも速い速度でCOを選択酸化するが、燃料電池の作動温度80Cで最も高い活性を示すので電池と一体化して機能させることが可能になる。なぜFeOxを多量に被せると活性になるかのメカニズムを18年度の研究で明らかにできた。拡散反射フーリエ変換赤外分光法により明らかになった反応機構は、これまでに考えられたことのないH2O分子の触媒作用という新しい触媒反応機構であった。COとH2の競争反応で説明される機構とは本質的に異なり、COの酸化反応は(HCOO)を中間体として進むことがしめされ、H2Oは中間体(HCOO)の生成と分解を促進し、しかも繰り返し反応に関与することで選択性が高くなっていることが分かった。Auの触媒作用もこの機構で働いていることが示され、3nm以下の微粒子でなくてもFeOxを被せることで著しく活性になることを明らかにした。このような反応機構は水素燃料電池の動作条件と近いので、この新触媒を燃料電池と一体化させ機能させる研究を進めている。
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