研究課題
基盤研究(C)
溶液のレオロジー特性を印加電圧により制御する電気粘性(ER)流体は、クラッチ、ダンパー、バルブなどへの応用が期待されることから注目されている。しかし、従来のER流体は一般に分散安定性に乏しく、実用化に向けての問題点を有している。そこで、本研究では"ひも状ミセル"溶液において発現される高い粘弾性を電気化学反応によりコントロールする新規ER流体の構築を目的として検討を行った。電気化学活性能を示すフェロセニル基を導入したカチオン界面活性剤を用いてひも状ミセルを形成し、その会合状態を電気化学反応により変化させることにより、粘弾性の制御を行うことができた。特に、最適な溶液組成の水溶液を電解すると溶液の粘度が最大で6000倍も変化することを見いだした。次に、電気化学反応による粘性変化の機構をレオロジー測定、cryo-TEM測定により検討した。動的粘弾性測定においてマクスウェル型の挙動が得られたことから、紐状ミセルどうしの三次元的な絡み合いが確認された。また、cryo-TEM観察によって、還元体の溶液では径5nm程度の紐状構造が観察されたのに対して、酸化後の溶液ではほぼ球状のミセルへと構造変化していることが明らかとなった。これらの構造変化は、酸化・還元反応によるフェロセニル基修飾界面活性剤の親水性変化に起因していることが示唆された。さらに、フェロセニル基導入界面活性剤の電極反応による親水性変化を利用した、無機顔料薄膜の新規調製法、ならびに、電場印加下での界面張力変化を利用した電気毛管乳化法によるマイクロカプセル調製についても検討を行った。
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