研究概要 |
本研究は、脂質二分子膜小胞体(リポソーム)の表面(外水相との親疎水界面)に金属錯体からなる機能部位を構築すること、これを活性点とする擬不均一系触媒反応を開拓することを目的とする。具体的には、リポソームのζ電位と反対電荷の親水性金属錯体を用いて、静電相互作用力による錯体担持リポソームの構築法を確立する。疎水性機能分子が脂質膜の疎水ドメインに包埋された従来系と対照的な、機能部位が表面に露出したイオン対型リポソームを構築し、ナノレベルの触媒粒子として展開する。具体的には、各種カチオン性金属ポルフィリンが、長鎖アルキル脂肪酸とL-α-ジミリストイルホスファチジルコリンなどからなる混合脂質系が形成するアニオン性リポソームの親疎水界面に固定されることを実証し、リポソーム表面の金属錯体が、外水相基質の反応に対する不均一系触媒として働く例を確立する。既に手掛りを得ているスーパーオキシドアニオンラジカルの不均化反応や、生成するH_2O_2のFenton反応をもとに具体例を拡張する。本年度の研究実績を以下に述べる。 1)N-アルキルピリジニウム基を有するポルフィリン錯体の創製 4-または2-ピリジンアルデヒドとピロールから得られるメソ位ピリジル置換ポルフィリンを原料に用いて、p-トルエンスルホン酸アルキルとの反応によりピリジニウム塩を合成した。N-アルキルピリジニウム-x-イルポルフィリン(x=2または4)のアルキル鎖長を変えたピリジニウム塩に広く拡張し、中心金属(マンガンおよび鉄)の導入をアルキル化の前後で行い、親水性が制御された一連の水溶性ポルフィリン錯体(金属メソテトラ(N-アルキルピリジニウム-x-イル)ポルフィリン)を得た。 2)スルホニウム塩が結合したポルフィリン錯体(2) スルホニウム塩をカチオン性基とする新規なポルフィリンを合成した。具体的には、x-(アルキルチオ)ベンズアルデヒドとピロールから、アルキル鎖長やアルキルチオ基の置換位置を変えたx-(アルキルチオ)フェニルポルフィリン類(x=2,4,6)を合成した。次いで、独自の方法である強酸(トリフルオロメタンスルホン酸など)を溶媒に用いたトリフルオロメタンスルホン酸アルキルとのアルキル基交換反応により、アルキルチオ基をジアルキルスルホニオ基に変換した。さらに、水を溶媒として中心金属を導入する(塩化マンガンを用いて可能であることを確認済み)ことにより、水溶性ポルフィリン錯体を得た。この方法では、最大4価カチオン錯体(メソテトラ(x-ジアルキルスルホニオフェニル)ポルフィリン錯体)まで合成することが可能であった。
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