研究課題/領域番号 |
17550138
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小柳津 研一 東京理科大学, 総合研究機構研究部, 助教授 (90277822)
|
研究分担者 |
湯浅 真 東京理科大学, 理工学部, 教授 (40192801)
|
キーワード | ポルフィリン / リボソーム / 静電相互作用 / 活性酸素種 / 触媒 / スルホニウム塩 / 界面 / 不均化反応 |
研究概要 |
本研究は、脂質二分子膜小胞体(リボソーム)の表面(外水相との親疎水界面)に金属錯体からなる機能部位を構築すること、これを活性点とする擬不均一系触媒反応を開拓することを目的とする。具体的には、リボソームの?電位と反対電荷の親水性金属錯体を用いて、静電相互作用力による錯体担持リボソームの構築法を確立する。これは、疎水性機能分子が脂質膜の疎水ドメインに包埋された従来系と対照的な、機能部位が表面に「露出」したイオン対型リボソームとなるため、ナノレベルの触媒粒子になる。具体的には、各種カチオン性金属ポルフィリンが、長鎖アルキル脂肪酸とL-α-ジミリストイルホスファチジルコリンなどからなる混合脂質系が形成するアニオン性リボソームの親疎水界面に固定されることを実証し、リボソーム表面の金属錯体が、外水相基質の反応に対する不均一系触媒として働く例を確立する。既に手掛りを得ているスーパーオキシドアニオンラジカルの不均化反応や、生成する過酸化水素のFenton反応をもとに、具体例を拡張する。また、癌の新生血管を通過できるナノDDSキャリヤとしてのリボソームに鉄ポルフィリン錯体を担持することにより、癌細胞へのFenton試薬の送達系を確立する。これを用いて、ポルフィリンが癌細胞に自発的に集積し、かつ、癌細胞で局所的O_2^-濃度が高いとする仮説を、癌組織の寛解から実証する。本年殿実績を以下に列挙する。 1)多価カチオン錯体への拡張 ポルフィリン環周囲の正電荷が、アニオン性リボソーム表面との強固な静電結合に寄与し、浴存アニオン性基質の集積効果に基く触媒活性が向上することを実験的に確立した。従来のピリジニウムポルフィリンでは4価カチオンが得られるのみであるが、スルホニウム塩に展開することにより最大12価まで拡張できた。具体的には、メソテトラ(χ-アルキルチオフェニル)ポルフィリンに強酸中でジアルキルスルホキシドを反応させることにより、メソ位フェニル基に複数のアルキルチオ基を導入した。この反応は、テトラフェニルポルフィリンなど、アルキルチオ基が置換していないフェニル基に対しては収率が低いと予想されたが、(χ-アルキルチオフェニル)ポルフィリンとの反応では高収率が期待できることが予備的な分子軌道計算から明らかになった。アルキルチオ基が多数結合したフェニル基をメソ位に有するポルフィリンを原料として、スルフィドの硫黄原子へのアルキル化反応により多価スルホニウム塩へと誘導した。スルホニウム塩の形成に強酸を使用するため、中心金属の導入は最終段階で行い、目的とする水溶性ポルフィリン錯体を得た。 2)メソテトラ(S-アルキルチオフェニウム-χ-イル)ポルフィリン ポルフィリン環のメソ位にチエニル基が結合したポルフィリンが得られ、これを原料とする簡単なスルホニオポルフィリンの合成について検討した。予備的な知見としてチオフェンのアルキル化により、アルキルチオフェニウム塩が得られることを明らかにした。これをポルフィリン(例えばメソテトラ(χ-チエニル)ポルフィリン(χ=2、3))に適用して、効率よくカチオン性ポルフィリンを合成した。 3)構造と安定度の検討 カチオン性ポルフィリンの構造は、MS、元素分析、^1H-NMR、^<13>C-NMR、UV-vis.により確認した。錯形成後は元素分析、単結晶を用いたX線構造解析により同定した。また水溶液中での光・熱安定度についても把握した。申請者らのこれまでの研究で芳香族スルホニウム塩の殆どは、脂肪族系のスルホニウム塩と異なり一般に充分高い安定性を示すことが明らかになっており、スルホニオポルフィリンについてもこれを実証した。
|