最終年度は初年度の結果を踏まえて、木材中の異物分析に関する研究の総括を行った。すなわち、赤外分光法、ラマン分光法、蛍光X線分析、荷電粒子励起X線分析などを廃木材、特に建築物廃木材中の異物検出・識別に用いて各分析法の特長と有用性を示し、これらの分析法を組み合わせ、試料の前処理として湿式操作を必要としない系統的な異物検出システムを考案した。このシステムの概要は以下の通りである。 まず、赤外分光法またはラマン分光法によって廃木材の測定を行い、接着剤、保存剤、塗料等が検出された場合はその同定・識別を行う。さらに、必要に応じて顕微分析等を行い木材中の分布を調べる。また、ホルムアルデヒド系接着剤、特にユリア樹脂系接着剤が検出された場合はVOCsの分析を行う。また、塗料、顔料、保存剤など無機物質の含有が予想される場合は、蛍光X線分析によりサーベイを行い、さらに微量元素の検出・定量が必要な場合は荷電粒子励起X線(PIXE)分析により元素組成分析を行う。 一方、赤外、ラマンによって接着剤等の異物が検出されなかった場合でも、CCAなど無機系保存剤が含まれている可能性があるので、蛍光X線分析は行う。 以上がわれわれの考案した木材中異物識別システムであるが、現在はまだ廃木材試料を実験室において分析している段階である。上記分析に用いる装置は荷電粒子励起X線分析を除いて可搬であり、部分的な改造によって工場等の現場における稼働が可能である。今後はより簡便で実用的な分析システムの構築を目標として、この研究を継続・発展させていく予定である。
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