研究概要 |
1.難分解性物質のトリアジン系農薬であるアトラジンの二酸化チタンによる光分解では,最終的にシアヌル酸を生成し,その後の分解は進行しない。酸化亜鉛を用いてシアヌル酸の光分解を行ったところ,トリアジン環が開環し,二酸化炭素と硝酸イオンまで最終的に無機化することに成功した。さらに,オゾンとに酸化チタン触媒を併用し,トリアジン系化合物を高収率で分解できた。 2.塩素・フッ素安息香酸誘導体の光触媒分解反応を行った。脱フッ素反応は困難でフッ素イオンは生成しない。C-F結合がC-Cl結合より強いためである。ベンゼン環の開環反応は容易に起こり,ギ酸や酢酸を経由して二酸化炭素に至る。塩素およびフッ素基の置換位置が異なる誘導体において,m-位の化合物はo位およびp位に比較して脱塩素反応は遅い。TOF-MSによる質量分析によってC-F基をもった中間酸化生成物を同定した。 3.太陽光エネルギーを利用したTiO_2光触媒によるビスフェノールA(BPA)の分解反応を行った。反応装置は,照射エネルギーに対する分解量から求めた見掛けの量子収率を比較した結果,非集光管型の方がエネルギー変換効率が高いことが分かった。高濃度のBPAを最適条件下で光分解したところ,開環率100%,無機化率(TOC減少率)95%で分解することに成功した。 4.フッ素系界面活性剤(PFCA,PFSA)はC-F結合が強く,二酸化チタンではフッ素イオンまで無機化が進行しない。均一光触媒であるポリタングステン酸では微量しか壊れず,分解率が低かったため,酸化亜鉛で行ったところ,分解を促進することができた。
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