研究概要 |
内分泌かく乱物質(endocrine disrupting chemicals, EDCs)は主に食品を介して体内に蓄積し、生体に様々な影響を与えることが知られている。そこで今回、EDCsが免疫機能に与える影響を、リポポリサッカライド(LPS)刺激によって産生される一酸化窒素(NO)の産生量を指標として解析した。 EDCs(ビスフェノールA(BPA)、ノニルフェノール(NP)、オクチルフェノール(OP)、2,4-ジクロロフェノール(DCP)、ペンタクロロフェノール(PCP))がRAW264細胞のNO産生に与える影響を調べるために、LPS刺激開始12時間後における単位時間当たりのNO産生量を測定した結果、全てのEDCsにおいて濃度依存的なNO産生の抑制が認められた。さらにエストロゲン受容体阻害剤(ICI182780)の処理により、BPA、NP、OPで処理した系でNO産生量の回復が認められたが、PCP、DCPではNO産生量の回復が認められなかった。iNOSの転写因子であるNF-κB(p65)の活性化をELISA法によって評価したところ、LPS刺激によるNF-κB活性化はEDCs処理によって減弱した。加えて免疫細胞学的解析から、NOシグナルの特徴的なメディエーターとして近年注目される、8-ニトログアノシンの形成量がEDCs処理することで減少することが示された。 これらの結果は、フェノール含有EDCsによるLPS誘導NO産生およびNF-κB活性化の抑制にはエストロゲン受容体依存的・非依存的な経路の両方が存在すること、さらにEDCsは8-ニトログアノシン形成阻害を介してNO由来のシグナルに間接的に干渉し、炎症進展に影響を与える可能性を示唆している。
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