チトクロムP450(P450)の電極との直接電子移動を観測する手法を確立し、変異導入したP450の酸化還元電位の測定から、酸化還元電位に及ぼす影響を探る。本研究では、耐熱性のP450を用い、電極による電子移動制御を可能とする方法を確立することを第一の目的としている。DDABにチトクロムPP450を加えて作製したフィルムについて、共鳴ラマン分光法を用いて調べた。その結果、補酵素であるヘムがポリペプチドから放出されていた。このことが基質の電気化学的触媒反応が観測されなかった理由であった。一方、レイヤー-バイ-レイヤー法により、PFC電極上にポリエチレンイミンを用いて作製したフィルム中では、チトクロムP450の構造は維持され、基質であるラウリックアシッドの結合も観測されることを明らかにし、電気化学的触媒活性が観測されることと対応付けることができた。また、新規な直接電気化学法を検討し、ポリエチレンオキシド修飾したP450を用いてキャスト固定するという簡便な方法で酸化還元応答を得ることもできた。 ヘム近傍の残基に変異を導入することにより、酸化還元電位を調節することが可能であることを確かめるため、Phe310とAla320を、それぞれAlaとGlnに置換したF310A変異体、A320Q変異体及びF310A/A320Q変異体を作製した。これらの変異体の酸化還元電位を、ジチオナイトを還元剤として用いて算出した。野生型と比較して、Phe310に変異を導入した2つの変異体の酸化還元電位が、正側に約40mVシフトすることが判明し、310の位置のアミノ酸が酸化還元電位の制御に重要であることを明らかに出来た。最後に、イオン液体のみにとけ、水に溶けないP450を作製することができた。
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