研究概要 |
1-メチルアルケン部分構造を持つ生物学的に重要な物質は数多く知られている。我々は、これらの化合物への[^<11>C]メチル基の導入によるPET(陽電子放射断層画像撮影法)トレーサー化を目的に、ヨウ化メチルを大過剰のアルケニルトリブチルスタナンにより捕捉するStille型高速カップリング反応(5分以内で終了)を検討した。本反応は、sp^2-sp^3炭素間でのカップリング反応の範疇に入るが、当初sp^2(phenyl)-sp^3炭素間高速カップリングにおける最適条件を適用しても不十分であった。また、既知の触媒量のPdを用いるsp^2(alkenyl)-sp^3炭素間でのStille型カップリングの条件も適用できないことが判明した。その後様々な条件検討を行った結果、DMF中60℃で進行する反応条件を見出すことに成功した。それらの中で、CH_3I/スタナン/Pd_2(dba)_3/P(o-tolyl)_3/CuX(X=Br or Cl)/K_2CO_3(モル比:1:40:0.5:4〜6:2:5)はエントリーしたほとんど全ての基質に対して良好に働く。また、CH_3I/スタナン/Pd_2(dba)_3/P(o-tolyl)_3/CuX(X=Br, Cl, or I)/CsF(モル比:1:40:0.5:2〜4:2:5)からなる条件は、適用可能な基質の一般性の観点から最良の結果を示し、相当するメチル化体を90%以上の収率で与えた。本反応の有用性は、実際の[^<11>C]メチル基含有化合物を合成することにより実証された。 一方、ヘテロ環上にメチル基を有する化合物のPETトレーサー化を目的に、ヨウ化メチルを大過剰のヘテロアリールトリブチルスタナンにより捕捉するStille型高速カップリング反応(5分以内で終了)を検討した。様々な条件検討を行った結果、種々のヘテロアリールトリブチルスタナンを基質にしても本反応が収率よく進行する反応条件を見出すことに成功した(未発表)。 今後、本研究により確立された反応条件の活用による、メチル基を有する代謝安定なPETトレーサーの創製が期待される。
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