| 研究概要 |
本年度は、生体膜のモデルとしてリン脂質二分子膜リポソーム(large unilamellar vesicle, LUV;粒子径100nm)を用いて、膜に組み込まれたコレステロールの会合状態について、高感度高分解能溶液NMRによる解析を行った。前年度の研究で得られた、生体膜の疎水性コア部分を模倣した有機溶媒中におけるコレステロールの会合構造に関する高分解能溶液NMR解析の手法とそれによる成果を基盤としたものである。従来、LUVのように、揺らぎの小さい膜のなかでコレステロールのNMRシグナルを観測することは非常に難しく、これまでに成功例がなかった。今回、膜のなかのコレステロールのシグナルの観測と帰属にはじめて成功した。この画期的な成果にもとづき、膜のなかのコレステロールの含量を増やしていったときのコレステロールの溶存状態、会合様式の変化、コレステロールが存在するときの膜リン脂質の構造の変化を、2次元NMR(COSY, NOESY)を用いて、原子サイトを識別しながら明らかにすることができた。
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