ウイルス複製タンパク質のウイルス複製起点への結合を阻害する、2種類の人工DNA結合タンパク質を大腸菌で過剰発現させ、その精製を行なった。また、ウイルス複製タンパク質遺伝子をクローニングし、そのタンパク質を大腸菌で過剰発現させ、精製した。これらタンパク質のDNA結合能をゲル・シフト・アッセイにより決定し、人工DNA結合タンパク質がウイルス複製タンパク質よりも約4、000倍結合能が強いことを確認した。次に標的DNAプローブと人工DNA結合タンパク質及びウイルス複製タンパク質を共存させた競争結合反応実験において、100分の1量の人工DNA結合タンパク質がウイルス複製タンパク質の標的DNAへの結合を完全に阻害できることを実証した。次に、人工DNA結合タンパク質によるウイルスDNA複製の阻害能を評価するため、擬似ウイルスゲノム複製系の改善を行なった。複製系の構成ベクターの量比の検討することにより、DNA複製効率を改善することができた。この擬似ウイルスゲノム複製系に試験管内で結合阻害能を確認した人工DNA結合タンパク質のヒト細胞用発現ベクターを導入することにより、ベクター非存在下のコントロールの約10%にまでDNA複製を阻害できることを見出した。人工DNA結合タンパク質の結合選択性をなくした変異体を用いたコントロール実験により、人工DNA結合タンパク質の複製起点への特異的な結合により、DNA複製を阻害できたことを確認した。さらに、人工DNA結合タンパク質は結合できないが、ウイルス複製タンパク質は結合できるようにウイルス複製起点を変異させた過渡的ウイルスゲノム複製系を構築した。この系における遺伝子導入した人工DNA結合タンパク質の複製阻害能を詳細に検証することにより、この人工DNA結合タンパク質が、ヒト細胞内でウイルスゲノム上の複製起点へ特異的に結合することにより、ウイルス複製を阻害したことを証明した。
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