研究概要 |
1.リパーゼのエナンチオ選択性の合理的制御 メカニズムとX-線結晶構造に基づいて、burkholderia cepacia由来リパーゼのエナンチオ選択性を制御するための変異導入サイトを287番目のイソロイシンに決定した。位置指定変異導入により立体的嵩高さを上げて遅く反応するエナンチオマー(S-体)の反応性を押さえればエナンチオ選択性は向上し、逆に立体障害を取り除いてS-体の反応を促進すればエナンチオ選択性は低下すると予測した。種々の変異体を調製し、2種類の2級アルコールの速度論的光学分割を実施した。エナンチオ選択性はE値で評価した。287番目のアミノ酸の嵩高さとエナンチオ選択性(E値)の間には明らかな相関が確認され、合理的にエナンチオ選択性を制御(上げたり下げたり)することに成功した。 2.リパーゼ反応を経由した光学活性ポルフィリン二量体の合成とその機能 リパーゼ反応により得た光学的に純粋なポルフィリンアルコールをイソフタル酸で連結し二量体とし、その亜鉛ポルフィリンの不斉識別機能を確認した。 3.遺伝子組換え大腸菌を用いたケトンの不斉還元 幅広い範囲の基質に対して高いエナンチオ選択性を示すカルボニル還元酵素を高発現する組換え大腸菌を構築し、それを用いて20種類以上のケトンを不斉還元した。そのうち12種類において98% ee以上の光学純度のアルコールを得た。2,4-オクタンジオンに対する反応条件を最適化したところ、位置特異的かつ立体特異的に還元反応が進行し、対応するアルコールを41g/Lの生産性で単離した。その他、重要医薬品の中間体を高効率・高光学純度で不斉合成した。 4.カルボニル還元酵素の単結晶作製に向けた実験 N末端側及びC末端側にヒスチジンタグを有するカルボニル還元酵素の遺伝子を構築し、それを大腸菌にて発現させた。今後、酵素の単結晶を作製する。
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