研究概要 |
蛋白質はペプチドと同じ構造をもつ生体高分子であるが、折り畳み、高次構造を形成することにより初めてその機能を発現する。しかし短いペプチド鎖は一般的に折り畳まず、ランダムな構造をとることから、短鎖のペプチドに機能をもたせることは難しい。このことから本研究では、ペプチド鎖に折り畳み構造をとらせるために、金属配位性の非天然アミノ酸として5'-アミノ-2,2'-ビピリジン-5-カルボン酸 3残基をペプチドに導入し、金属錯体を形成させることにより一定の高次構造をもつ人工蛋白質の設計・合成を検討した。特に、ルテニウム(II)イオンを用いることにより、ルテニウムトリス(ビピリジン)型錯体をコアにもつ発光性人工蛋白質を合成し、その光物性、機能について検討することを目的とする。 本年度は、配位結合に伴いペプチドがターン構造をとることが予測される部分に、-Pro-Gly-配列を導入した、比較的シンプルな構造を有する21残基ペプチドを合成し、そのルテニウム錯体を得た。ルテニウム錯体は4種類の構造異性体の混合物として得られ、HPLCにより分離、精製し、MALDI-TOF-MSにより合成確認を行った。コアとなるルテニウム錯体にはΔ/∧という光学異性があり、これらはCDスペクトルにより決定された。また、異性体構造は二次元NMR(NOESYなど)情報から、分子モデリングを用いて予測された。さらにこれらの人工蛋白質は470nm付近に吸収極大を、630nm付近に極大を有する、ストークスシフトの大きなりん光発光を示した。この光特性を利用して、ルテニウム錯体をコアとする人工蛋白質を細胞内に導入、フローサイトメトリーならびに共焦点レーザー顕微鏡を用いて、細胞内導入挙動について検討した。
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