本研究は、細胞を用いて生物活性を簡易に評価する技術の開発を目的としている。平成17年度は、モデル実験に適した細胞及び活性物質の選抜を進める共に、活性評価に応用可能な、細胞結合性の蛍光プローブの開発に取り組んだ。 生物活性測定のモデル物質として、細菌細胞外膜の複合多糖のリピドA部分に着目した。リピドAは複合多糖の活性発現の本体で、活性は化学構造により著しく異なっている。しかし、天然物試料は、構造類縁体の混合物であり、化学構造による相違を明確にするには、系統的な構造の試料が重要である。そこで、化学構造を明らかにしている、Erwinia菌のリポ多糖を用いて調製を進めた。酸加水分解の条件を変化させて調製したリピドAをシリカゲル薄層クロマト分離することで、リン酸数が2〜0個、脂肪酸が7〜5個の高純度試料を得た。 生物活性の評価は、アジポサイトカインなどの免疫関連タンパク質を産生する、白色脂肪細胞及び繊維芽細胞に着目して進めた。培養液にリピドAを添加し、炎症サイトカインTNF-αの生産量を分析すると共に、活性発現に関わるタンパク質との結合性を調べた。その結果、ビスリン酸のヘキサアシルリピドAはナノグラムレベルで活性を示し、モデル物質として有用なことが分かった。また、生物活性評価への応用を目的に、蛍光性金属酸化物微粒子と糖結合性タンパク質のコンジュゲートを調製した。同プローブは細胞に選択的に結合し、有用性が示唆された。
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