本研究は、細胞を用いる生物活性の簡易評価技術の開発を目的としている。これまでに、生物活性評価のモデル実験に用いる物質として、微生物生産物質の中で多彩な生物活性を示すErwinia菌のリポ多糖に着目した。その活性本体であるビスリン酸リピドAを分離精製し、脂肪酸数などの異なる系統的試料を得た。リピドAの生物活性として、免疫関連タンパク質生産を調べた。その結果、ラットの白色脂肪細胞がサイトカインTNF-αを生産し、活性評価に有用なことが分かった。活性はリピドAのリン酸結合数により著しく異なっており、機能解析法の確立されていない糖関連物質類の評価において、免疫関連タンパク質は定量的な指標になると考えられる。 平成18年度は、細胞を用いる活性評価技術の有用性を、白色脂肪細胞により生産されるサイトカイン量の測定に基づいて調べると共に、生物活性の発現及び抑制機構の解明を進めた。ペプチド系抗菌剤が膜結合性で抗敗血症性であることから、マガイニン2を用いて、リピドAに作用させたときの生物活性やリピドA膜の高次構造変化を調べた。その結果、マガイニン2はTNF-αの生産量を低下させ、活性が抑制された。リピドA膜のX線解析や物性測定の結果などから、ペプチドは膜の内部に入り込み、リピドAの分子配列を変化させており、高次構造変化が生物活性を低下させると推測された。また、機能性糖鎖として微生物オリゴ糖を調製し、質量分析法などにより構造を明らかにした。
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