本研究は、生物活性の簡易評価技術開発を目的とする。生物活性評価のモデル試料には、腸内細菌科のErwinia菌のリボ多糖に着目した。リボ多糖は血液凝固など多彩な生物活性を示す。その活性部位リピドAの脂肪酸及びリン酸結合数の異なる試料を調製し、実験に用いた。生物活性は培養細胞にリピドAを作用させたときの、炎症性サイトカイン生産を調べた。続いて、培養細胞によるリピドAの活性評価技術を応用し、活性の抑制法を検討した。 平成19年度は、リピドAによるサイトカイン生産の測定に、デバイスで培養した細胞を用いる生物活性評価技術を応用した。培養細胞にリピドAを添加したときのTNF-α生産量の変化、及び、同活性に及ぼす抗菌ペプチドの効果を系統的に検討した。抗菌ペプチドにはマガイニン2、及び、そのアミノ酸の一部を疎水性アミノ酸及び荷電性アミノ酸で置換した合成誘導体を用いた。また、抗菌ペプチドを作用させたときのリピドAの高次構造変化をX線解析し、物理化学的性質に及ぼす影響をゼータ電位、相転移挙動などの測定により検討した。その結果、培養細胞のTNF-α生産はマガイニン2よりも、膜結合性の高いマガイニン2誘導体により低下した。ペプチドはリピドAの表面電荷や高次構造の変化により、生物活性を抑制すると推測された。本研究の培養細胞による活性の評価技術は、生物活性抑制の検討に有用で、細菌感染に起因する敗血症などの治療や予防の基盤技術になると推測される。
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