今年度の研究目的は、研究の第2段階として、本法を多成分系に適用できるように計算コードの開発を行うことである。通常の溶融塩はイオン結合のエネルギーが大きいため融点が高い。このため、実用に供される溶融塩は、融点を下げる目的で複数の塩の共融組成で用いられる例が多い。そこで、溶融NaClのような単成分系の溶融塩のみならず、溶融(Na-Cs)Clといった多成分系への適用が求められている。しかしながら、これまでの報告では多成分系への適用例がなく、適切な表式の検討、計算コードの開発、適用可能性の検討などの取組が必要である。 そこで、実用的展開として今年度はこれらの問題に取り組んで多成分系への拡張を図った。まず、基本的な定式化と計算コードの開発に取り組んで手法を確立した。その後、実用的な溶融塩系である種々のアルカリハロゲン化物の共融混合塩への適用を行った。これらの系について、温度や密度依存性などを調べて単成分系の結果と比較し議論した。昨年度の研究で取り組んだ種々のアクチノイドやランタノイドの塩化物の共融組成への適用を行った。得られた成果は、分子シミュレーション討論会と液化学シンポジウムにて口頭発表の予定で、併せて論文投稿の準備をした。
|